事業継続力強化計画サポートセンター札幌 記事

「誰ひとり取り残さない」BCPへ:DE&I視点で災害に備える方法

2025年09月25日 11:28

災害や緊急時、企業が真っ先に考えるのは「社員や顧客の命と安全をどう守るか」。
しかし、従来のBCPでは “健常な日本人のフルタイム従業員” を前提にしていることが多く、
実際の職場ではそれだけでは対応できません。

  • 高齢従業員や要介護者

  • 外国人労働者

  • 障がいを持つ従業員・顧客

  • LGBTQ+当事者

  • 子育てや介護と両立中の社員 …など

こうした多様な人材に対応するBCP=DE&I対応BCPの整備は、
これからの企業の「本当のレジリエンス(しなやかさ・強さ)」を示す指標になります。


✅ DE&I(多様性・公平性・包括性)とは?

項目内容🧑‍🤝‍🧑 Diversity(多様性)年齢、性別、国籍、障がい、性自認など多様な背景を尊重すること⚖ Equity(公平性)個別の事情に応じて適切なサポートを行い、機会を平等にすること🌐 Inclusion(包括性)誰もが排除されず、安心してその場にいられる職場・社会をつくること

これらをBCPの設計思想に組み込むことで、「全員に届く安全」を実現できます。


✅ DE&I対応BCPの必要性(なぜ重要か?)

● 法的・社会的責任の観点から

  • 障がい者差別解消法、労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)など

  • 「合理的配慮」は災害時にも求められる時代

  • ESG・人的資本開示の観点からもBCPの“人への配慮”が問われる

● 実際の災害での課題

課題例外国人に避難情報が伝わらなかった日本語が読めず、避難が遅れたケース車椅子利用者が避難できなかった階段しかない・誘導方法が不明だったシングルマザーの出勤義務子どもを置いて出社できなかったLGBTQ+が避難所で排除された性的マイノリティに配慮がない運営体制

BCPの中で想定していなければ、企業が加害者になるリスクさえあります。


✅ DE&I視点で見直すべきBCPのポイント

分野見直しポイント💬 情報提供- 外国人向け多言語避難指示(英語・ベトナム語・中国語など)
- 視覚・聴覚障がい者への代替手段(音声読み上げ・手話・点字)🧑‍🦽 避難誘導- 車椅子・杖利用者への対応手順書
- 支援が必要な社員・顧客のリスト化と支援担当の事前決定🏠 就業対応- 子育て・介護者向け「免出勤/在宅勤務」の明記
- LGBTQ+への配慮(更衣・トイレ・避難所)📢 社内体制- 「災害時人権配慮マニュアル」の策定
- 管理職への研修(マイクロアグレッション対策など)


✅ 実践事例:小売業E社(大阪府・従業員60名)

背景: 店舗には外国人店員・高齢パート・障がい者雇用者が在籍。
課題: BCPマニュアルが一般的な内容のみで、実際には“避難誘導できない社員”がいた。

対応策:

  • 各スタッフの状況に応じた「個別避難行動計画(PEP)」を作成

  • 英語・中国語の避難マニュアルを壁に掲示し、スマホでも閲覧可能に

  • 毎年1回、**「DEI配慮付き避難訓練」**を実施

  • LGBTQ+当事者と話し合いながら、トイレ・更衣に関する配慮ルールを明文化

効果:

  • 社員の安心感とエンゲージメントが向上

  • 離職率が大幅に低下

  • 「人的資本報告書」に反映し、取引先からの評価もUP


✅ DE&I対応BCPの構築ステップ

  1. 自社の多様性を把握(社員・顧客にどういった属性がいるか)

  2. 個別配慮が必要なケースを洗い出す

  3. 情報提供・避難・就業・訓練の設計をDE&I視点で見直す

  4. 外部の専門家・当事者から意見を聞く

  5. 定期的にPDCAを回す(訓練・見直し)


✅ 社会的評価にもつながるメリット

項目効果🔒 信頼性向上顧客・社員から「配慮のある会社」として認識される👥 離職率低下心理的安全性が高まり、エンゲージメントが向上💰 補助金加点一部補助金(例:人材確保等支援助成金)で配慮施策が評価対象に📊 人的資本開示対応DE&I視点の災害対策は報告書の強化材料に


✅ チェックリスト:自社のBCPはDE&I対応できている?

✅ 外国人従業員や顧客向けの多言語対応はあるか?
✅ 高齢者や障がい者の避難行動は明確か?
✅ 子育て・介護従業員への配慮ルールは整備済みか?
✅ LGBTQ+を排除しない避難・設備設計になっているか?
✅ 社内研修・訓練にDEI配慮の内容が含まれているか?


✅ まとめ:「全員を守るBCP」が企業の価値をつくる

DE&I対応のBCPは、「人を守る」という本質的な目的をより強く実現する仕組みです。
企業の大小にかかわらず、“誰も取り残さない”設計思想が、組織の持続可能性を高めます。

企業のレジリエンスは、設備やデジタルだけではなく、人の多様性への配慮によって支えられています。


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